中国の遼時代（916-1125）の観音菩薩坐像です。遼は中国北辺から日本海に至る契丹人による征服王朝で、一時期、契丹國と称していました。日本では平安時代に相当する時期であり、あの平将門が、「実力者が天下を治める」ことの妥当性を主張するために、遼を建国した太祖（大契丹王）を崇めていたことが歴史的に知られています。中国では鉄の鋳造技術が進歩していたことから、柔らかい青銅を原材料とする金銅仏だけではなく、硬い鉄を原材料とする「鉄仏」が広く普及していました。鉄仏は腐食に弱いため、金銅仏と比較して損傷が大きくなりますが、力強く無骨な鉄の質感が武闘派には好まれました。日本でも、平安末期から鎌倉期の関東武士団に鉄仏が好まれていたことは周知の事実です。本品は、唐王朝の息吹を残す太くて高い派手な宝髻（単髻）や水瓶を持つ左手、力のある蓮弁表現など数多くの見所を有した鉄仏の優品です。金銅仏と比較して、残存数が極めて少ない中国鉄仏の逸品をコレクションに加えてみるのも素敵です。お好きな方、如何でしょうか？